日の出

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グループ・ディスカッションのポイント

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 グループ・ディスカッション

 

 

就職活動の時期が近づいてきた。インターンの選考などでグループ・ディスカッションを経験した方も多いと思う。初めてグループ・ディスカッションを経験した人は、「何を話せばいいのか分からなかった」、「何を評価しているのかわからない」などの感想を持つが、実際にはしっかりとチェックポイントがあるように思う。今回は、グループ・ディスカッションに関するそれらの疑問に自分なりに答えてみたいと思います。

 

グループ・ディスカッションとは

グループ・ディスカッションではなにか1つのお題が出されて、それに関して複数人で意見を表明し合い、制限時間内にそれらをまとめていく。まとめた結果を発表するケースもあれば、発表の機会は与えられず、ディスカッションの過程のみを評価する場合もある。

いずれの場合にしても、本質的に大事なのは過程の方だと感じる。

 

グループ・ディスカッションの流れ

0.時間配分を決める

実際には決めた時間配分のとおりに行くとは限らないが、必ずこれを意識しておかなければならない。議論が白熱化するあまり、グループとしての意見がまとまらなかった場合は全員落ちかねない。

個々人の意見を表明する時間や、意見に対する議論を行う時間、最後には議論をまとめる時間を用意しなければならない。

 

1.言葉の定義や前提を決める

あるお題において、言葉に対する認識がグループの各個人で異なる場合がある。

そうすると、それぞれの言葉の意味で意見を勝手に構築してしまい、そもそも前提が違うせいで全く咬み合わない議論が行われてしまう。それは時間の無駄以外の何物でもない。

最低限の意味や前提は予め確認しておき、議論が半ばでも何か食い違いがあると感じた場合は、その都度確認を取る必要がある。

 

2.意見を自由に述べる時間

まず誰かの意見を聞かなければならない(あるいは自分が喋るかもしれない)。

その際周りはその意見を聞き、もしも自分と違う意見だったとしても一旦話は聞いたほうがいい。まだ全体の意見が分かっていない時点で、最初から細かい議論をしてしまうと必ず時間が足らなくなる。一度全ての意見を聞き、共通している部分と、明らかに剥離している部分をザッと認識するのが大事だ。

 

3.意見に対する細かい議論

最初から満場一致の意見が出ることなど無い。必ず意見は食い違っており、そこについて議論する必要がある。ここで最も時間を要すると思うので、進行状況と時間を常に意識しながら意見を交わす。

注意しなければいけないのは、勝ち負けを決めようとしているわけではないということ。

相手をボロボロに否定して、自分の意見が通ったとしても、それは決して良い印象ではない。もちろん相手が明らかにおかしなことを言っていたとしても、「人間として」何かしらのフォローをしながら正しい方向へ導くということをしなければならない。

 

4.意見をまとめる

上手く議論が進んで行ったとしても、最後に一度、議論の過程を最初から振り返ってみるということが必要である。実は話の一部が理解できなかったという人がいる場合もあるし、議論の軸が根本からずれていっている可能性もある。最後にまとめるだけでなく、常に全体像を意識して根本に立ち返るということは必要だ。

 

役割

結局、グループ・ディスカッションをしたときに何が評価されているのだろうか。

それは企業ごとに細かい部分は異なるかもしれない。しかし大事なのは間違いなく過程である。結果が明らかにおかしい場合はその時点でアウトだが、グループとしての答えが妥当だとしても、そこに至る過程によって個々人に差をつけるよりほかない。

 

そこで重要になるのは自分がどのような役割を担ったかである

 

もしも単に答えを導くことだけが評価基準ならば、何もグループでやる必要はない。

頭が冴えていれば一人で妥当な答えが出てきそうな問題もある。しかし仕事をする上ですべての物事を完全に個人で進めるというケースは殆ど無い。いろいろな立場の人を考慮して、彼らを説得し物事を進めなければならない。

 

タイムキーパー

まず最も単純で、かつ必ず必要なのがこの役割である。時間は有限であるため、時間の使い方をコントロールするという役割は非常に重要だ。 

具体的な振る舞いとしては、「あと○○分なのでまとめに入りましょう」などと全体に声掛けをすることだ。時計さえ気にしていれば誰にでもできる。しかし、最初に決めた時間配分に厳密に沿う必要はない。むしろ本質的に重要な議論で、答えを導く決め手になりうる話のときに、予め決めていた時間を過ぎたからと行って議論を止めてしまったら、グループで意見をまとめるという本来の目的を達成できなくなる。

 

司会

これも重要である。一番目立つので、アピールしやすいかもしれない。議論が白熱しすぎていたりした場合に流れをコントロールできれば評価されるだろう。

ただし、全体をコントロールするのは難しい仕事で、不慣れな場合はむしろ悪影響を及ぼす場合もある。十分にグループ・ディスカッションに慣れた人がやった方が、全体としては良い結果になると思われる。

あまり意見を言えていない人を気遣って、意見を表明する機会を与えるなどの気遣いも必要である。ずっと聞く側に徹していて、実は素晴らしい意見を抱え込んでいる可能性もある。しかし、明らかに困っているのに、無茶ぶりをする形で「何か言え」というのでは最悪な司会だ。

相手の状況や心境を理解することも必要であり、おそらく最も難しい役割だ。

 

アイデアマン

相手を説得する、納得させるというのは大事なことで、いろいろ細かいテクニックはあるものだと思う。しかし、一番大事なのは丸め込むことではなく、本当に素晴らしいと賛同してもらえることではないだろうか。

周りが確かにその通りだと思えるような活路を見い出せれば、当然議論は円滑に進む。そのようなアイデアを提供できれば、それだけ十分に大きな役割を果たせたと言えるだろう。

コレに関しては、お題に関する事前知識が偶然にもあれば有利になる。当然そのような不公平が起こらないような配慮がなされた上でお題が決められているだろうが、場合によっては業界に対する理解を問うという意味で、何かしらの知識が生きてくるケースもあるだろう。

少なくとも志望する業界のことを(当然のことだが)勉強しておくのは大事なことだ。

 

書記

実は1つ1つの議論に白熱するあまり、さっきまでの話題を忘れてしまうこともある。

その結果、少しずつ議論の軸がずれていくようなことも起こりうる。

 

その場合に文章として記録が残っていると非常に役に立つ。書記は地味な作業に感じるかもしれないが、議論をする上では非常に大切な役割だ。書記はただ書くだけではなく、各々の意見を簡潔にまとめ、議論に重要な情報の記録を残しておくという重大な役割を担っている。

 

ときに司会などに先立って、議論の要点をまとめるような発言をしても良いだろう。

 

 

 

役割を明確に分ける必要はあるのか

この部分に関しては明白ではない。

本質的に重要なのはグループで意見をまとめていくことであり、その中で何ができたかである。ある役割を担ったほうが、チームとしての活動を意識できるため、アピールはしやすいだろうが、何かを演じるのがグループ・ディスカッションの目的ではない。

 

もちろん決めてしまったほうが分かりやすいには分かりやすいが、本来の力が制限されてしまったりすることも考えられる。

 

当然、司会が何人もいるのでは話の進行が上手くいかないので、誰か1人を選出するということは大切な考え方だ。しかし、本質的な部分はグループ全体で「話の進行を上手くコントロールする」ことであって、司会を準備することではない。司会を指名しなくても、誰かがリーダーシップを発揮して場をコントロールできるならばそれで一向に構わないだろうし、全員の意思疎通が取れるならばそれで良い。

ただそういうケースが稀なので、司会を準備するというだけのことである。

 

また「アイデアマン」なんてのはなろうと思ってやるものではない。結果としてその役割を担うことがあるだけで、アイデアマンをやるんだと決め込んでも仕方がない。素晴らしく良い意見が出るならば、それは素晴らしいことなので、いつでも各自チャンスがあるものである。

 

タイムキーパーや書記は決めたほうがいいだろう。

タイムキーパーはさほど難しいことではないので、誰かにお願いするか、自分で名乗りでてもいいだろう。タイムキーパーだからといって発言ができないわけではない。

 

書記は絶対に必要だ。まとめるのに自信がある人にやってもらったほうがいい。書くスピードが遅いとか、著しく字が下手であるなどの、議論とは本質的に関係ない能力差もあるにはあるので注意が必要だ。文章としての記録は必ず残すべきである。そうでないと全体像を振り返ることができなくなる(全員が驚異的な記憶力を持っているならばいいが、そんなことは実際無い)。

 

 

私自身は基本的にどれかをやろうとは決め込まない。

役割を決める流れであろうが、そうでなかろうが、状況に応じて必要な役割をこなす。本来はそういう振る舞いができるかどうかを見られている。今はそれをみんなが分かってしまっているので、予めグループ・ディスカッション対策として役割分担してしまうという手法が取られているに過ぎないのだと思う。別に役割分担自体にグループ・ディスカッションの本質があるわけではないと感じる。

 

実際、明確に役割分担を意識しない私でも、複数の業界(コンサル、SIer、メーカー)においてグループ・ディスカッションで落ちたことは一度もない。

 

 

振る舞い

役割を分担しようがしまいが、結局見られているのは議論の中での振る舞いである。

ここでは注意すべき振る舞いについて記す。

 

否定は慎重に

明らかに言っていることがおかしい場合でも、否定はかなり慎重にしたほうが良い。

それは単純に、場の雰囲気が悪くなる可能性があるからである。

 

「そんなもん、間違ったことを言う奴が悪い」と思うかもしれないが、相手が人間である以上は感情というものも意識しなければならない。否定されたあまりにその人が黙りこんでしまい、後々に良いアイデアが出るかもしれないという可能性の芽を摘んでしまうことになる。

 

もちろんそれでスネてしまうようであれば、その人自身の評価も良くない。だけど、その雰囲気を回避できなかったという全体の評価も悪くなる。

 

たまたまその意見に関してはおかしな場合でも、その人の全てを否定してしまってはいけない。次にも何か意見を、自信を持って言えるような雰囲気を維持する必要がある。

 

結論から言う

当たり前のことだが、長々と話す前に結論を言う。

結論を言っていれば、理由や具体例をより周りが理解しやすくなる。結論を聞いた時点でその理由に大方の予想がつく場合もある。そうすれば議論はかなり円滑に進む。

先に理由や事例を長々と話されて、結局一番伝えたいことが何なのかを先延ばしにされてしまうと聞く気も失せる。

 

当然、そもそも話を長々とすること自体がよくない。結論を良い、理由と事例を簡潔に述べるというのが一番良い。

 

意見に賛同する

意外と重要である。何でもかんでも、うんうん頷けということではない。

何か良い意見が出たときに、「たしかにその通りだ」と思ったのならば、それを口に出すべきということである。

なぜならば、意見を言った側は必ずしも確信があるとは限らない。もしかしたら恐る恐る勇気を出した提案なのかもしれない。良い意見が出たときに、「あなたは良いことを言ってくれました」ということを何かしらの言葉で明示的に伝えれば、次に意見を言いやすい雰囲気ができる。

 

何度もいうが、グループ・ディスカッションは人間同士の営みであるので、感情面を意識することも大変重要なことである。

 

時折まとめる

何かの意見で議論が白熱化したときに、その議論の意見を表明した当事者でなくとも、一旦話をまとめるということをすると良い。周りは愚か本人たちすらも、話しの概要がつかめていないということが多々あるためである。

 

意外と自分は分かっていても、理解できていない人が混じっているケースが多いのである。

グループ・ディスカッションでは全員で力を合わせるということが重要なので、ついてこれないやつは置いてけぼりにするというのではなく、そういう人も気づかえるという能力が評価される。

 

仕事でも必ずしも周りが自分と同様の理解を持つとは限らない。同じ職場ならともかく、取引先などの相手は持っている事前知識が違うために、話を理解できないことだって十分に考えうる。

そういう場合に、簡潔にまとめて理解させる力は当然に重要である。

 

ときに折れる

ハッキリ言って、良し悪しが明確に決まる場合は少ない。相手にも良いところがあり、自分にも良いところがある。そういう場合が多い。そのときは相手の良さを尊重して折れるということをしてもいい。相手のことを立てることのできる人間であることがアピールできる。

 

 

グループ・ディスカッションの過程のパターン

妥協をして結論を出す

時間がなくなったので多数決を取るとか、よく分からんけどまあいいやとなるパターンである。

 

実際、限られた時間で「ビジネスに使える素晴らしいアイデア」など出るはずもない。そうならば実際に仕事をしている社会人の立場がなくなる。

大事なのは過程であって、いくら(社会的に見て)それらしい結論が偶然生まれても、そこに至る過程が単なる妥協だったならば意味がない。

 

次別種の課題に対しても妥協という形で結論が出た場合に、それが良い結論に至る保証が無いからである。もしも自分の意見を折るにしても、「対抗する意見の良さによってそういう選択をした」と言わなければならない。良さがわからないけど、もうそうするなどという妥協はしてはいけない(当然、話をよく聞き、理解した前提であるが)。

 

誰か一人が強引に決める

たまに声がでかいやつがいる。そういう奴が威勢だけで進めてしまう場合もある。そういう人は当然評価されないが、それを抑制できなかった周りも良い評価にはされない。

そもそもグループ・ディスカッションである意味がなくなる。

 

ちゃんと議論しましょう。

 

場合分け、整理で終わる

意外とある、最悪のケースである。

少し長く書きます。

 

グループ・ディスカッションにはテーマがある。そのテーマには「上手い回答(妥当な、まともな回答)」があるケースと無いケースの両方が存在する。いずれにしても、必ず何かしらの意見を1つにまとめなければいけない。

 

「上手い回答」があるとタイプというのは、例えば「ある業界の売上を伸ばす方法」などの課題である。「上手い回答」というのは「唯一の解」ということではなく、結果が「まとも」か「まともではない」かを判断できるという意味である。

出版社の売上を上げるという課題で、「例えば電子書籍に対応する」という結論が出るのと、「降水確率を予測する」という結論が出るのでは、どちらがまともなのかは明らかである。

 

一方「上手い回答」が無いタイプというのは、例えば「給与とやりがい」どちらが大事かなどというタイプである。もちろん企業に応じて色があって、「給与のためなら何でもやります」という人を好む場合もあるかもしれないが、グループ・ディスカッションにおいてそれは問われていない。

「給与とやりがい」のどちらを大事にするかなどは、完全に個人の価値観の話であって、正しいとか間違っているなどの判断はできない。その中でそれぞれの意見を述べて、考えを共有し、お互いを理解し合う過程が見られている。

 

 

場合分けや整理は議論の過程では重要である。

「業界の周りの状況が○○であるならこういうことが考えられる」と述べていくのは良いが、それが結論になってはいけない。

つまり、「○○なら☓☓で、△△なら□□にします」という回答は絶対ダメなのである。

 

例えばSIerでは顧客企業の業績を伸ばすシステムづくりの手伝いをする。いわゆるソリューションである。これを実施するときには、いろいろな状況を考えた上で、結局実施できるのは「ただ1つである」。意見をまとめ、ソリューションを1つ実施しなければならない。

 

回答が無い価値観を共有する場合も同じである。確かにただの飲みの場であるならば、雑談で終わりだが、ビジネスをやる上では価値観が異なる中で何か1つの指針をたてなければならない。

例えば、価値観が少し異なる人たちで新しい事業を始めようというときに、企業理念の好き勝手に書き散らすなんてしないだろう。何か軸を1つ作らなければならない。

 

 

全員が納得した上で議論が決着する

当然これが最もいい。しかし見られているのは過程であるとは言っても、結果が明らかにおかしければ意味がない。ただのアホの集まりで終わる。

結果満場一致でも変な小芝居は通用しない。

素直に意見を表明し合い、そして相手を説得し、時には折れるということをする。そして意見をまとめていく。結局は、その人の対人での振る舞いが見られているのである。